「生物と無生物のあいだ」読了メモ

「解説」としての雑考

「もうウイルスと細菌は間違えない」というぐらい,「ウイルス」の説明が良かったので,その部分を使って考える.


まず見てわかるのは,「ストーリーに組み込まれている」ということ.これによって,「説明口調」に比べてとっつきやすくなる.また,上手く書けば,「もっと先を読みたい」と思わせることによって,読み手を引き込むことが出来る.ただし,書き手の技量なりセンスなりが必要な手法である.他にも「面白いかどうかは個人差がある」という問題も一応あるが,これは「説明口調だと眠くなる」という風に他の書き方でも同じような問題は発生するので,そこらへんは対象依存になる.


次に,文章に含まれる「情報」に注目してみる.ウイルスに関する説明は3ページほどあるが,要約すれば内容自体は5行で書ける.この事象だけ見れば「薄めて書いている」ようにも見えるが,おそらく実際には「なめらかにつないでいる」と見るべきなのではないかと思う.要約すれば情報は濃縮されるが,その代わりにそれらの段差は大きくなる.要約された情報の間を補うように文を追加することで,その段差は小さくなり,情報を飲み込みやすくなる.
ここで得られる知見は,「段差を小さくする」というのは「情報間のつなぎを作成する」に相当するということ.
もしかしたら,全体のテンポのために(階段の段差・長さを崩さないために)こう書いているというか,こう書くことでテンポに貢献しているのかもしれない.


そして,「構造」に注目すると,いわゆる「対比構造」を取っていない.今まで見たウイルスの説明は,全て「ウイルスと細菌の両方の特徴列挙」の形式を取っていた.つまり,「細菌はホゲホゲだけど,ウイルスはホニャララ」という形式だった.しかし,この本で取られているのはそういう形式ではなく,「片方(ウイルス)のみの説明」である.一見,これでは不十分に見えるが,読んでみると「ウイルスの特徴」がわかれば「細菌の特徴」もわかるようになっている.これは,AとBを比べていて「Aは速い」と言えば自動的に「Bは(相対的に)遅い」が導けるのと同じ原理である.
この構造はDNAの構造(ネガ・ポジ)みたいだなぁ.天然でやってるのかわかってやってるのかわからないなぁと思う.どちらにしてもすごいが.
リファレンスの際はこの構造は困るので,やはりリファレンスと解説は別物らしい.

未分類雑記

・何も準備してなかったので,「お変わりありませんね」の項で吹き出しそうになった.笑いの閾値が低いと,こういう時に困る.


・読んでる最中にこれを思い出した.

たとえば 川がそうだ。

「川」というのは それ単体で存在するものじゃなく、
水が流動しているという状態にすぎない。

人間の体も同じこと。
炭素や酸素などいくつかの元素が集合してできた、
いわば自然現象のひとつだ。

LAMPO 2巻 P.74