詭弁まわりの雑記

・「若い人はもっと好きなことを仕事にした方がいい」という文章の論理式化。
まず、この文章は何のtrue、falseを判定するかを考える。最後に「いい」とあるので、「ある特定の事象が良いか悪いか」の判定と考えられる。その事象は「若い人がもっと好きなことを仕事にすること」である。この事象を分解すると、「若い」は「人」の属性。「好きなことを仕事にする」も「人」の属性。その二つの属性を持つ「人」が「もっと増えること」がこの事象になる。
まとめると、「命題Pが成立することが良い」「P=集合Uが増加する」「U={人 | 若い[人], 好きなことを仕事にしてる[人]}」となる。Prologっぽく書くにはどうすればいいのか、見当がつかない。特に集合まわり。リストを使う、ってのもなんか違う気がするし。


・で、上の文章の否定の仕方について考える。否定側は「not 命題Pが成立することが良い」を示せば良い。notを移動させると、「命題Pが成立することは良くはない」となる。つまり、「悪い」とまでは言えなくとも「良くはない」ことを示せれば十分。
「命題Pが成立するか否か」は「成立する」または「成立しない」のどちらかのみ。そして、上の「良い・悪い」は「成立する場合」と「成立しない場合」の比較であり、「成立しない場合」の方が良い(少なくとも同等)ということを示せれば、「成立することは良くない」ということが言える。
なので、「not 集合Uが増加する」の方が良いことを示せればよい。これもnotを移動させると「集合Uが増加しない」になり、「U={人 | 若い[人], 好きなことを仕事にしてる[人]}が増加しないことの方が良い(少なくとも同等)」であることを示せれば良い。Uが増加するためには、「好きなことをしてる若くない人が、若くなる」「若い人で好きなことを仕事にしてない人が、好きなことを仕事にする」「若くもなく好きなことを仕事にもしてない人が、若くなって好きなことを仕事にする」のどれかが成立すれば良い。しかし、「若くなる」という事象は成立しないと互いに同意できると思うので、「Uが増加する」=「若い人で好きなことを仕事にしてない人が、好きなことを仕事にする」であると仮定してよい。なので、結局、「若い人が好きなことを仕事にする」という事象がもっと成立した方が良いか、となる。
いやはや長かった。しかしまだ終わりではない。「事象」の方は「若い人が好きなことを仕事にする」にまで限定できたが、その「良し悪し」の「基準」が必要になる。「良い」というのは評価基準を持たないため、評価基準は別途用意する必要がある。そして、たいてい「肯定側」と「否定側」は別々の評価基準で良し悪しを決め、その総合評価は困難であるため、ギロンは面倒なことになる。


・いやしかしあれだ。こんな結果的に当たり前のことのために、こんなに時間を使うべきものなんだろうか。上の導出だけで1時間かかったぞ(動画を消化しながらだけど)。そして結論は「良い悪いって単体では評価軸を持たないよね」というどっかで見たやつだ。ここでつながるのかよ。


・単一の文章でこんだけ時間がかかったので、実際の対話を落とし込むのはしんどいな。


・疲れたので別方向へ。キベンをゲームとして捉えた場合の話。
「A」である、という主張を補強するために、「B」と「B→A」を出すことで、「だからAだよね」という行為が基本。
これはつまり、手札(自分の脳内)から、相手に見えるように=場に命題を出す行為なんじゃなかろうか、と捉える。つまり、最初は「B」とか「B→A」というのは手札(脳内)にあって、それを場に出す(発言する)ことで「A」というエフェクト?を引き出す、というゲーム。
例えば「B→A」よりも先に「B」を出したとして、そのレスポンスで「Bは今関係ないじゃないか」という反論とかできないか。この設定だと単調だが、「D」「D→C」「C→B」「B→A」という流れで「D」を出した相手への牽制としては十分な気がする。「Dは今関係ないじゃないか」とか。関係あることがわかってしまうと逆に不利になる気がするが。しかし、「Dは今関係ないじゃないか」というのはどういうエフェクトなんだろう。
相手を怒らせたりすることで冷静さを失わせるというのは、手札破壊(=脳内の選択肢の削除)になるのかな、とか。
重要なのは、「相手が場に出したものも利用できる」ということ。「そんなこと言ったら、こっちもそうですよ」とか、「そんなこと言ったら、こうも言えてしまいますよ」とか。自分を有利にするためにも使えるし、相手を不利にするためにも使える。
自分は「A」を、相手は「not A」を導出する。自分は「B→A」を、相手は「C→not A」を使う。「ゲーム」である以上は、それに対してなにがしかの優劣がつく必要がある。そのために使ってみたいのが「成立数」と「信頼度」。基本的には「成立数」が多い方が良い。例えば、「Z→not A」+「Z」よりも「B→A」+「B」+「C→A」+「C」の方が良い。この成立数を上げるために、あたかも論理的に正しいかのようなキベンが使える。例えば「B or C」+「B→A」で「A」だ!と言ってみたりとか。そして、もう一つのパラメータが「信頼度」。これは、「あいつは元犯罪者だぜ」とか「あいつの従兄弟が医療関係者だから、それに都合の良いように言ってるんだ」という風にラベルを張ることで、「あれ?じゃあこの"C→A"って正しくないんじゃね?」という風に思わせるもの。「成立数」を「スコアの合計」とみなすなら、「信頼度」はその一つ一つの「スコアの大きさ」に影響するもの。
そんな感じで、「揚げ足取りは、相手の全体のスコアを下げる行為」とか考えている。「鳥類は空を飛ぶ」という命題に対して、「でもペンギンは飛ばないよね」という命題をぶつけることで、「あれ、じゃあ"鳥類は空を飛ぶ"ってのは嘘なの?」という風に「鳥類は空を飛ぶ」のスコアを下げたり、そういう信頼度の低い(と思われている)命題を出したことで他の命題の信頼度まで落とされたり。
少しずつ、ゲームとしての方向が決まってきた感じ。
「B→A」って、「エンチャント(命題)」だよなぁとか思う。「B」にくっつけることで「A」という効果を発揮するが、「B」を破壊されると一緒に無力化されてしまう。


・どうせゲームとして捉えるなら、有名どころの詭弁パターンを戦術として再現できた方が楽しい。なので、詭弁パターンをどうやったら再現できるかを考えてみる。

  • 1択攻撃(感情への訴え、二分法、排中律
      • 「この法案に反対するってことは、お前はテロに賛成なのか」
    • 戦法
      • これに対して、相手は「テロには反対だ」と返すはずなので、「ならばこの法案に反対するのはおかしい」という方向に持っていき、「自分はテロに反対」+「相手もテロには反対」+「テロに反対→この法案に賛成」のコンボで自分の結論の有効性を上げる(相手の主張まで自分の主張に組み込む)。
    • ゲーム
      • 手札か場に「テロに反対→この法案に賛成」を持っておき、相手の「この法案に反対」というのを確認したら「この法案に反対→テロに賛成」をぶつける。相手はこれによって相手の場に生じた効果「テロに賛成」を否定するために「テロに反対」を場に出すはず。これをもとに、「自分はテロに反対」+「相手もテロに反対」+「テロに反対→この法案に賛成」によって、「この法案に賛成」という結論を強化(スコアをプラス?)する。
    • 対抗法
      • こうやって考えると、1択攻撃「この法案に反対→テロに賛成」に対して素直に「テロに反対」をぶつけるのではなく、「この法案に反対→テロに賛成」がそもそも正しくないことを示す方が有効な対抗手段だな、と思う。「テロに反対→この法案に賛成」が(ほぼ)対偶なので、どっちか片方を潰せばその効果は発揮されずに消失させられる(厳密に言えば賛成の否定は「賛成しない」であって「反対する」ではないが、ギロンをする場合は「賛成」の否定は「反対」が多いか。しかし、それを悪用した詭弁もありうるので云々)。この対抗手段をゲーム的に再現するにはどうすればいいだろう。


・0択攻撃(ポイズン・ウェル、魔女狩りの論理)は、実現手段が数種類あるっぽいな。「君が熱心に主張したもので、今まで正しかったものは一つもない→主張を続ければこの論理によって正しくない、主張をやめれば反論もできなくなってしまう」「この法案に賛成するならあなたは既得権益側の味方だし、この場では反対してもいざ採決となったらあなたはきっと賛成側に回るだろう→"賛成側には回るか否か"という説明への脱線を促される」
ロックデッキっぽい動きだな。

  • N択攻撃(二分法、排中律
      • 「お前は、男は浮気するものだと思うか、それともしないものだと思うか」
    • 戦法
      • こちらの用意した選択肢を選ばせる。自分に都合の良いものだったら、仲間として取り込み、都合の悪いものだったらその選択肢が間違っていることを示すことで、相対的に自説を補強する。上の例だったら、「浮気すると思う」→「ほら、こいつもそう言っている」、「浮気しないと思う」→「浮気する男は現にたくさんいるじゃないか」
    • ゲーム
      • 「A or B or C or D」(二分法の場合は「A or notA」)というのを場に出し、相手がどれを採用するかを強制させる。相手の出した手を元に、「A→Z」とか「B→Z」とかのコンボを決める。そう考えると、選択肢が狭い方が効率が良いし、ならば二分法の方が良い。1択攻撃ほどピンポイントではないが、1択攻撃が仕掛けられないような分野とかもあるかもしれないし、そこでは役に立つだろうか。と考えていくと、N択攻撃はやはり1択攻撃と一緒にして一つのカテゴリにすべき感じだ。
    • 対抗法
      • ベタなのは、「どちらとも思わない」というやつ。これもまた「相手の出した命題そのもの」を否定する方向。1択攻撃への対抗法と同じベクトル。〜択攻撃では、「答える」のではなく「相手の出した命題が不当であることを証明する」方が良いのか?

・0択攻撃で悩んだように、他の詭弁パターンでも一つの例に固執してる可能性があるな。

  • 相殺法(オマエモナー)
      • 「他の人だってやってるじゃない」「お前だって未成年のとき飲酒してただろ」
    • 戦法
      • それが自分だけではないことをアピールすることで「それは大したことじゃない」という風に自己正当化したり、「自分に言うんだったら他の人にも言え」「自分とお前は同罪だ」という風に相手の行動のコストを上げたり相手の評価も一緒に下げたりする防御的な詭弁。
    • ゲーム
      • 自分の場の「A」、相手が出した「A→B」によるエフェクト「B」で自分がデメリットを負う際の反撃手段とみなすことが出来る。相手の場に「A」を出すことで、「お前もA→BからBをくらえ!」という風にする。あるいは、自分の場の「A」の信頼度を落とす(大したことじゃないと示す)ことにより、「A→B」で生成される「B」の信頼度を落とす(こちらのダメージの軽減だから、マイナスのスコアの半減とかそんな感じ?)。
    • 対抗法
      • ゲームの項で見たように、これも「相手へのなすりつけ」と「多数の第三者へのなすりつけ」は構造的に別物なので、分類は別にすべきかもしれない。それはともかく、「お前もそうだろ」系への対抗手段としては「じゃあ、自分は罰を受けたから、次はお前の番な」あたりが有効?「自分が罰を受けてない場合」は使えないが、その場合だとむしろ「自分は罰を受けなかったけど、お前は罰を受けろ」ということになり、なんかダブスタっぽいだぜ。じゃあ、そん時は「自分も罰を受けるからお前も」という感じで。「他の人も」系はどうすりゃいいんだろう。思いつく範囲では反論もすぐに思いついてしまう。


・詭弁パターンについてはひとまず以上で。対抗法まで考え出してしまって疲れた。


・相手の反応パターンを利用している、という考えもあるか。相手の「正義」が「弱っている人は助ける」というものだったら、「弱っている」というラベルを自分に張ることで、その「正義」の発動を誘発し、「助ける」という結果を得る。


・「論理で人をだます法」の番外編にいいのがあった。「何のために論争しているのか」のダメな目的一覧。ゲームで使うなら、4番目の「相手より優れているという気持ちを抱きたいから」かな。「相手よりスコアが高かったら勝ち」とか。


・ついでだからメモ。「論理で人をだます法」は、読んだからといって詭弁に対抗できるとは思わないが、網羅性が高いので資料としては嬉しい。「詭弁論理学」は、古典だけども同じように分類と名称の確認に有用。「ダメな議論」は実例が多いので実践に近いが、その代わりに資料としての有用性が低くなる。
しかし、現状の自分の結論だと「詭弁に対抗するには、詭弁で自分が揺るがないことが最重要」ということになってるので、本気で対抗するなら「自分に自信を持つような何かをする」→「ダメな議論」とかを読んで自分が揺るがないことを確認する、とかか?本じゃなくても、はてブを徘徊してればよさそうな感じだが、見つけるのが面倒かな。


・ゲームにするなら名称は「Logic : the Gathering」かな。どっかから怒られそうだな。